生成AI画像の著作権|企業が確認する5項目
こんにちは、合同会社SAi代表の佐藤です。2026年8月17日、生成AIで作った画像をめぐる訴訟が報じられました。報道によると、AIで作製したモデル画像を販売している大阪市の企業が、美容院の予約サイトで自社の販売画像と酷似した画像を240点も無断で掲載されているのを見つけ、賠償請求をしたものの交渉がまとまらず提訴に至ったとのことです。
争点は「AIでつくった画像に著作権が認められるか」。代理人弁護士は「先駆的な裁判になる」とコメントしています。
当社もブログのアイキャッチを生成AIで作っている当事者なので、他人事ではありません。この記事では、文化庁が公表している公式見解を確認しながら、企業として何を押さえておくべきかを整理します。
結論:AI生成物は「人がどう関わったか」で扱いが変わる
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日取りまとめ)では、次のように整理されています。
| どう作ったか | 著作物にあたるか |
|---|---|
| AIが自律的に生成(人が指示を与えないか、簡単な指示にとどまり「生成」ボタンを押しただけ) | 著作物に該当しない |
| 人が「道具」としてAIを使用(創作意図があり、創作的寄与と認められる行為をしている) | 著作物に該当し、AI利用者が著作者になる |
判断の分かれ目は、人の「創作意図」があるか、そして人が「創作的寄与」と認められる行為をしたか、の2点です。
なお、著作権法上著作者になれるのは人(自然人または法人)だけで、法人格を持たないAI自体が著作者になることはありません。
つまり「AIで作ったから著作権はない」と一括りにはできず、プロンプトの設計や取捨選択、加筆修正といった人の関与がどれだけあったかが問われることになります。今回の訴訟が注目されているのは、まさにここが裁判で判断される可能性があるからです。
侵害かどうかは「類似性」と「依拠性」で判断される
もう一つ押さえておきたいのが、侵害の判断基準です。文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)には、こう明記されています。
あるコンテンツが既存の著作物の著作権侵害になるかどうかは、そのコンテンツを人が作成したか、AIにより生成されたかにかかわらず、「類似性」及び「依拠性」があるか否かによって判断される。
| 要件 | 意味 |
|---|---|
| 類似性 | 既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができること |
| 依拠性 | 既存の著作物に接して、これを自らの作品の中に用いること |
そして類似性の程度は、次のように整理されています。
| 状態 | 類似性 |
|---|---|
| アイデアのみが共通 | なし |
| 創作的でない表現が共通 | なし |
| 創作的表現が一部共通 | あり |
| 完全一致(デッドコピー) | あり |
ここが実務上とても重要です。「作風が似ている」だけでは侵害になりません。著作権法が保護するのは創作的表現であって、アイデアや作風は保護されないからです。逆に、完全なコピーでなくても創作的表現が共通していれば類似性は認められます。
今回の報道では「左右を反転させ、服の色も変えられた」と主張されていますが、加工したから別物になる、という話ではないということです。
企業が確認する5項目
1. 使っている画像の出所を把握する
自社サイトや資料で使っている画像が、生成AI製なのか、素材サイトの購入品なのか、誰かが拾ってきたものなのか。まずここが整理されていない会社が少なくありません。担当者が変わると特に分からなくなります。
2. 生成の工程を記録しておく
これが今回の件から得られる最も実務的な教訓です。前述のとおり、著作物性は「創作意図」と「創作的寄与」で判断されます。どんな指示を出し、どれを選び、どこを修正したのか——この工程が記録されていれば、いざというとき自社の権利を主張する材料になります。
報道された企業も、性別・年齢・構図・背景・雰囲気をAIに指示し、生成された複数の候補からベースを選び、手作業で修正を加え、さらに別のAIで加工する、という工程を説明しています。工程を語れること自体が資産です。
3. 使っているツールの利用規約を確認する
生成AIサービスによって、商用利用の可否や生成物の権利の扱いは異なります。無料プランと有料プランで条件が違うこともあります。業務で使うツールについては、規約の商用利用の条項だけでも読んでおいてください。
4. 既存の作品に似ていないか確認する
特定の作家や作品を狙って似せる使い方は避けてください。文化庁の資料では、特定のクリエイターの作品群を対象にした意図的な追加学習について、著作権法第30条の4が適用されない場合があるとされています。「〇〇風で」と特定の作家名を出してプロンプトを書く運用は、社内ルールで止めておくのが安全です。
5. 無断使用されたときの手順を決めておく
自社の画像やコンテンツが無断で使われた場合、権利者は差止請求(新たな侵害物の生成の差止め、既に生成された侵害物の利用の差止め)や、侵害行為により生成された生成物の廃棄請求ができるとされています。
実務としては、①証拠の保全(スクリーンショット・URL・日時)②相手方への通知 ③弁護士や相談窓口への相談、という順番になります。最初の証拠保全を飛ばすと後で困るので、見つけた時点で必ず記録してください。
当社の場合:アイキャッチをAIで作っている立場から
参考までに、当社のやり方も書いておきます。このブログのアイキャッチ画像は生成AIで作っていますが、「それっぽい画像を1枚出して終わり」にはしていません。
記事ごとに構図・被写体・光の当て方・雰囲気を文章で設計し、出てきた画像を見て採否を判断し、意図と違えば指示を変えて作り直します。実際、この記事の直前に書いた記事では、生成された画像が別記事と似た構図になってしまったため、「この要素を使わない」と明示して作り直しました。
こうした工程は、著作物性の議論以前に品質のために必要なものですが、結果として「人がどう関与したか」の記録にもなります。生成AIを業務で使うなら、ボタンを押すだけの使い方から一歩進めておくことをおすすめします。
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Q. 生成AIで作った画像に著作権はありますか?
A. 一律には決まりません。文化庁の考え方では、人が指示を与えないか簡単な指示にとどまり「生成」ボタンを押しただけのものは著作物に該当しないとされています。一方、人が創作的に表現するための「道具」としてAIを使ったと認められる場合は著作物に該当し、AI利用者が著作者になります。判断されるのは人の「創作意図」と「創作的寄与」の有無です。
Q. AI自体が著作者になることはありますか?
A. ありません。著作権法上、著作者になれるのは人(自然人または法人)のみで、法人格を持たないAI自体が著作者になることはないと整理されています。
Q. AIで作った画像なら、無断で使っても問題ないのでは?
A. そうとは限りません。著作権侵害になるかどうかは、そのコンテンツを人が作ったかAIが生成したかにかかわらず、「類似性」と「依拠性」があるかで判断されます。相手の画像に創作的表現が認められ、それを見て使っていれば侵害になり得ます。
Q. 左右反転や色の変更をすれば別の画像になりますか?
A. なりません。完全一致(デッドコピー)でなくても、創作的表現が共通していれば類似性は認められるとされています。逆に、アイデアや作風が共通しているにとどまる場合は類似性は認められません。
Q. 自社の画像を無断使用されていたら、何ができますか?
A. 権利者は差止請求(新たな侵害物の生成の差止め、既に生成された侵害物の利用の差止め)や、侵害行為により生成された生成物の廃棄請求ができるとされています。実務ではまず証拠の保全(スクリーンショット・URL・日時の記録)を行い、その後に通知や専門家への相談へ進みます。
Q. 報道されている同じ社名の会社と関係はありますか?
A. ありません。報道されている企業は大阪市の別法人です。当社は東京都千代田区神田和泉町に本店を置く合同会社SAi(法人番号 T3010003045253/ドメイン sai-labs.co.jp)で、同名・類似名称の他法人とは資本関係・人的関係はございません。
まとめ:ボタンを押すだけの使い方から一歩進める
- AI生成物の著作物性は人の「創作意図」と「創作的寄与」で判断される
- 自律的に生成しただけのものは著作物に該当しない/道具として使えば利用者が著作者
- 侵害の判断は人が作ってもAIが作っても同じ基準(類似性・依拠性)
- 作風が似ているだけでは侵害にならないが、加工しても創作的表現が共通すれば類似性は認められる
- 企業は①出所の把握 ②工程の記録 ③規約の確認 ④類似性の確認 ⑤無断使用時の手順を押さえる
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