予約の時間になっても、お客様が来ない。1人で営業しているサロンなら、その2時間の売上がそのまま消えます。それでも、キャンセル料をどう決めて、どう伝えればいいのかが分からず、何も決めていない店が多いのが実情です。
この記事では、美容室・サロン・飲食店でそのまま使えるキャンセルポリシーの例文と、無効にならない金額の考え方、伝える場所、無断キャンセルを減らす工夫をまとめます。
キャンセルポリシーに書く6つのこと
- いつまで無料か(例:前日の18時まで)
- それ以降はいくらか(前日・当日・無断で分ける)
- 無断キャンセルの扱い(料金と、次回以降の予約の扱い)
- 遅刻の扱い(何分で施術の短縮・キャンセル扱いになるか)
- 連絡の方法(電話・LINE・予約サイト。受付の時間)
- 例外(体調不良、災害、店の都合で休む場合)
例文1:美容室・サロン(基本)
キャンセルポリシー ご予約の変更・キャンセルは、 前日の18時までにご連絡をお願いいたします。 それ以降のキャンセルにつきましては、 下記のキャンセル料を申し受けます。 ・前日18時以降〜当日のご連絡:施術料金の50% ・ご連絡のないキャンセル:施術料金の100% 【遅刻について】 ご予約の時間から15分を過ぎてご連絡がない場合は、 キャンセルとして扱わせていただきます。 遅れる場合は、必ずご連絡ください。 内容を変更して、できる範囲で対応いたします。 【体調不良・災害のとき】 発熱などの体調不良、台風・大雪・交通機関の乱れによる キャンセルには、キャンセル料をいただきません。 無理をなさらず、お早めにご連絡ください。 【ご連絡先】 電話 00-0000-0000 / LINE(24時間受付) お一人おひとりにお時間を確保してお待ちしております。 ご理解とご協力をお願いいたします。
例文2:サロン向け(やわらかい表現)
ご予約の変更・キャンセルについて 当サロンは完全予約制で、 お一人ずつお時間を確保してお待ちしています。 ご都合が悪くなった場合は、 前日までにご連絡いただけますと助かります。 空いたお時間を、ほかのお客様にご案内できます。 当日のキャンセルは施術料金の50%、 ご連絡のないキャンセルは100%を 次回ご来店時に申し受けます。 体調がすぐれないときは、キャンセル料はいただきません。 どうぞ遠慮なくご連絡ください。
個人サロンでは、厳しい言い回しより、なぜお願いしているのか(時間を確保している、ほかのお客様に案内できる)を書くほうが、受け入れられやすくなります。
例文3:飲食店(コース予約・席のみ予約)
ご予約のキャンセルについて 【コースをご予約の場合】 ・2日前まで:無料 ・前日:コース料金の50% ・当日・ご連絡のないキャンセル:コース料金の100% 【お席のみご予約の場合】 ・当日・ご連絡のないキャンセル: お一人様 0,000円(当店の平均的なご利用額をもとに算定) 人数の変更は、前日の〇時までにご連絡ください。 ご予約の時間から15分を過ぎてご連絡がない場合は、 キャンセルとして扱わせていただくことがございます。
例文4:ネット予約の画面・LINEに入れる短文
【キャンセルについて】 前日18時まで無料。以降は50%、無断キャンセルは100%の キャンセル料を申し受けます。体調不良・災害時は無料です。 変更・キャンセルはこのLINEから24時間受け付けています。
例文5:前日のリマインド(LINE・SMS)
〇〇様 明日〇月〇日(〇)〇時より、ご予約を承っております。 ご来店をお待ちしております。 ご都合が悪くなった場合は、本日18時までに このメッセージへの返信でお知らせください。 (〇〇〇 店名)
キャンセル料は、いくらまで決めていいのか
キャンセル料は、店が自由に決められるわけではありません。消費者契約法第9条により、同じようなキャンセルで店に生じる「平均的な損害」を超える部分は、無効になります。
平均的な損害とは、業界の平均ではなく、その店の損害の平均です。考え方は次のとおりです。
| 見るところ | 考え方 |
|---|---|
| 空いた枠を、ほかのお客様で埋められたか | 前日までのキャンセルなら埋まりやすい → 損害は小さい |
| 使わずに済んだ費用があるか | 薬剤・材料・食材を使っていなければ、その分は差し引く |
| キャンセルの時期 | 直前ほど埋めにくい → 損害は大きい |
このため、時期が近いほど高くする段階制が、理屈に合います。「1週間前から100%」のような設定は、平均的な損害を超えると判断されやすく、無効になるおそれがあります。
飲食店については、経済産業省の勉強会が2018年にまとめた「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」に、目安が示されています。
- 無断キャンセルは、飲食店の予約全体の1%弱。損害は年間約2,000億円
- 前日・2日前のキャンセルも加えると、発生率は6%強、被害額は約1.6兆円と推計
- コース予約:ほかのお客様で埋め合わせるのが著しく難しいため、損害が全額となることがあり、その旨のキャンセルポリシーにもとづいて全額を請求できる場合がある(転用できる飲食物の代金や人件費は除く)
- 席のみの予約:平均客単価の何割か(平均客単価から、転用できる原材料費・人件費などを除いた額)が一つの目安。店は、平均客単価や算定の方法を、あらかじめ予約客に示す必要がある
美容室・サロンには同じような公的な目安はありませんが、考え方は共通です。施術の枠は在庫できず、直前に空くと埋められません。当日と無断のキャンセルを高く、前日までを無料か低くするのが、説明のつく設定です。
どこに、いつ示すか
キャンセルポリシーは、お客様が予約を確定する前に見える場所に示します。予約のあとで初めて知らせたポリシーは、請求の根拠になりにくくなります。
- ネット予約の画面・予約サイトの店舗ページ:リクルートの「美容センサス2026年上期」では、女性の58.1%がネットで美容室を予約しています。ここに書いていなければ、半数以上のお客様は目にしません
- ホームページ(料金表の近く)
- LINE公式アカウント(予約の案内・リッチメニュー)
- 店頭(受付・会計の近く)
- 電話予約のとき:「前日の18時以降はキャンセル料がかかりますので、ご変更はお早めにお願いします」と一言
同じレポートも、インターネット上での明示に加えて、電話予約の場合でも必要最低限の説明を行うべきだとしています。
無断キャンセルを減らす4つの工夫
レポートが飲食店に求めている取り組みは、サロンにもそのまま当てはまります。
- 予約の再確認(リマインド):前日にLINEやSMSで知らせる。忘れていただけの無断キャンセルは、これで防げます
- キャンセルの連絡をしやすくする:電話だけでなく、LINEや予約サイトから24時間連絡できるようにする。「連絡しづらいから、そのまま行かない」をなくします
- キャンセルポリシーとキャンセル料の目安を示す:予約の前に見える場所に
- 事前決済・預かり金:高額なメニューや、無断キャンセルが続いた方には、事前の支払いをお願いする
請求することより、起こさないことのほうが現実的です。少額のキャンセル料を回収する手間は大きく、支払われないこともあります。
運用で気をつけること
- 例外を決めておく:体調不良、災害、交通機関の乱れ。その場で迷わないように
- 店の都合で休むときの扱いも書く:お客様にだけ求めるのは不公平に見えます。店の都合でキャンセルする場合のお詫びの形を決めておきます
- スタッフ全員で同じ対応にする:人によって取ったり取らなかったりすると、不信につながります
- 常連のお客様の初回は、柔軟に:長く通ってくれている方の初めてのキャンセルに満額を求めるかは、店の判断です。記録だけ残し、繰り返す場合に適用する方法もあります
- エステの回数券・コースの解約は別のルール:期間1か月超・5万円超の契約は、特定商取引法でクーリング・オフと中途解約のルールが決まっています。1回ごとの予約のキャンセルとは分けて考えます
まとめ
- ポリシーには、無料の期限・金額・無断の扱い・遅刻・連絡方法・例外の6つを書く
- キャンセル料は、店の平均的な損害まで(消費者契約法第9条)。直前ほど高くする段階制が理屈に合う
- 飲食店の目安:コース予約は全額を請求できる場合がある。席のみは平均客単価の何割か(経済産業省の勉強会のレポート)
- 予約の前に見える場所に示す。ネット予約の画面は必須
- 請求より、前日のリマインドと連絡のしやすさで、起こさないようにする
よくある質問
Q. キャンセル料は、いくらまで取っていいですか?
A. 法律で一律の上限は決まっていませんが、消費者契約法第9条により、同じようなキャンセルで店に生じる「平均的な損害」を超える部分は無効になります。平均的な損害は、業界の平均ではなく、自分の店の損害の平均です。空いた枠をほかのお客様で埋められたか、使わずに済んだ材料費があるか、を差し引いて考えます。美容室・サロンに決まった相場はありません。直前ほど枠を埋めにくいので、前日までは無料か低く、当日と無断は高くする段階制にして、自店の実情で説明できる金額にします。
Q. キャンセルポリシーは、どこに書けばいいですか?
A. お客様が予約を確定する前に見える場所です。ネット予約の画面、予約サイトの店舗ページ、ホームページ、LINEの予約案内、店頭に掲示します。電話予約のときは、口頭で一言伝えます。予約のあとで初めて知らせたポリシーは、請求の根拠になりにくくなります。
Q. 無断キャンセルをされたら、キャンセル料を請求できますか?
A. 予約の前にキャンセルポリシーを示していて、金額が平均的な損害の範囲内であれば、請求できます。ただし、少額を回収する手間は大きく、実際には支払われないこともあります。請求よりも、前日のリマインド、事前決済、次回の予約時の前払いなど、起こさない仕組みのほうが現実的です。
Q. 体調不良や台風のときも、キャンセル料を取っていいですか?
A. 取れる・取れないの決まりはありませんが、体調不良や災害のときは請求しない、と決めて明記しておく方法があります。無理に来店されて体調が悪化したり、感染が広がったりするほうが、店にとっても損になるためです。例外の扱いは、あらかじめポリシーに書いておくと、その場で迷わずに済みます。
Q. エステの回数券やコースの解約も、キャンセルポリシーで決められますか?
A. 別の決まりが優先します。期間が1か月を超え、金額が5万円を超えるエステの契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたり、クーリング・オフ(8日間)と中途解約のルールが法律で決まっています。中途解約で店が請求できる上限は、施術の開始前は2万円、開始後は「2万円か契約残額の10%の低いほう」に提供済みの施術の対価を足した額です。1回ごとの予約のキャンセルとは分けて考えます。

