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RAGとは?社内文書をAIに答えさせる仕組みと費用

公開: 2026/05/25 / 最終更新: 2026/10/09 / By 佐藤 駿介
読了時間: 約7分
約3,326文字

結論(要点)

RAG(検索拡張生成)は、質問が来るたびに社内文書を検索し、該当箇所を根拠にAIが答える仕組み。モデルを再学習するファインチューニングと違い、文書を差し替えるだけで更新でき、どの資料を見たかを示せる。ローカルLLMは「AIをどこで動かすか」の話で、RAGと組み合わせれば文書も質問も外に出ない社内AIになる。費用は既製SaaSで月数万円〜、専用構築は当社で初期0円・月額1万円〜(サーバー費別)。資料約800件・社員50名の事例は月額2万〜6万円。精度は元の資料の整理で決まる。

この記事の目次

「就業規則のこの場合はどうなる?」「この製品の保守は年何回?」。社内の資料に書いてあるのに、探すより人に聞く方が早い。その「人に聞く」をAIに置き換える技術がRAGです。

結論を先に書くと、RAGとは「AIが答える前に社内文書を検索して、見つけた箇所を根拠に答える」仕組みです。AIに自社のことを覚え込ませるのではなく、答えるたびに資料を見に行かせます。だから資料を差し替えればすぐ反映され、「どの資料のどこを見たか」も示せます。

この記事では、仕組みを図1枚で、ファインチューニングやローカルLLMとの違いを表で、費用の目安と実際に運用している事例を、作っている側の立場で書きます。

結論:RAGは「資料を見ながら答えるAI」

RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)の動きは3段階です。

AIは「記憶」でなく「いま検索した資料」を見て答える ① 質問 有給は何日? ② 社内文書を検索 意味の近い箇所を数件 ③ AIに渡す 質問+見つけた箇所 ④ 回答 根拠つき 社内文書の置き場 規程・マニュアル・議事録 検索しやすい形に変換済み 資料を差し替えれば、次の質問から新しい内容で答える。AIの再学習はいらない
  1. 社員が質問する
  2. 社内文書の中から、質問に意味の近い箇所を数件探す
  3. 質問と、見つけた箇所をセットでAIに渡す
  4. AIがその箇所を根拠に答え、どの資料を見たかを添える

ポイントは、AIが「自分の記憶」で答えないことです。ChatGPTをそのまま使うと、それらしい嘘(ハルシネーション)を答えることがありますが、RAGは資料という事実を見ながら答えるので、誤答が減ります。見つからなければ「分からない」と返す作りにもできます。

RAG・ファインチューニング・ローカルLLMの違い

この3つは混同されやすいのですが、答えている質問が違います。

RAGファインチューニングローカルLLM
何の話か何を見て答えるかAIに何を覚えさせるかAIをどこで動かすか
やること資料を検索して渡すモデルを追加学習させるAIを社内のサーバーで動かす
情報の更新資料を差し替えるだけ再学習が必要(RAGと組み合わせる)
根拠の提示どの資料か示せる示しにくい(RAGと組み合わせる)
向いている用途社内の質問対応、文書検索文体や専門用語の癖を覚えさせる外に出せない資料を扱う
費用感比較的安い高い(データ整備と学習)サーバー費が別途かかる

中小企業が「社内の質問に答えるAI」を作りたいなら、まずRAGです。ファインチューニングは「自社の言い回しで書かせたい」ときに検討するもので、知識を足す目的では割に合いません。ローカルLLMはRAGの代わりではなく、RAGのAI部分を社内で動かす選択肢です。詳しくはローカルLLMとはに書いています。

RAGでできること

「社内のことを聞けば答えてくれる人」をAIで作るイメージです。

  • 社内ヘルプデスク:就業規則、経費精算のルール、申請の手順
  • 技術の継承:ベテランの作業手順書や過去のトラブル記録を若手が質問
  • 営業支援:過去の提案書・見積から似た案件を探す
  • 問い合わせ対応:製品マニュアルをもとに一次回答を作る
  • 製造現場:作業手順や図面の仕様を現場で確認

共通しているのは、「資料はあるが探せない」「ベテランしか知らない」という状態の解消です。

作り方(4ステップ)

1. 資料を集めて、整える

PDF・Word・Excel・社内Wikiなど、読ませたい資料を集めます。ここが精度の8割を決めます。古い版と新しい版が混ざっていると、AIは両方を根拠にして矛盾した答えを返します。

2. 検索できる形に変える

資料を意味で検索できる形(ベクトル)に変換して、専用のデータベースに入れます。長い資料は段落ごとに分けます。ここは道具で自動化できます。

3. 検索とAIをつなぐ

質問が来たら「検索→該当箇所を添えてAIに渡す→回答」が動くようにします。AIはChatGPTのAPIでも、社内で動かすローカルLLMでも構いません。

4. 画面を用意する

社員が使うチャット画面を用意して完成です。「どの資料を見たか」を表示し、部署や役職で見える資料を分ける仕組みも、この段階で入れます。

費用の目安

作り方費用の目安向いている場合
既製のSaaSを使う月数万円〜資料が社外に出てよい。すぐ試したい
自社で内製する人件費+APIの従量料金社内に作れる人がいる
専用に構築する(当社)初期費用0円・月額1万円〜(税別)。サーバー費は別途外に出せない資料がある。権限や記録が要る

既製のSaaSは手軽ですが、社内文書を外部のサーバーに置くものが多く、図面・契約書・顧客情報を読ませるなら確認が要ります。当社は、資料をどこに置き、AIをどこで動かすかから一緒に決めて作ります。費用の考え方はAI導入費用の考え方|方式別の予算・見積もり内訳・計算例にまとめています。

実際に運用している例:資料約800件・社員50名

当社が構築した社内AIナレッジ検索の例です。共有フォルダに資料が約800件あり、ファイル名がばらばらで検索が効かず、探すのに1回10分、見つからなければベテランに聞く、という問い合わせが1日10回ほどありました。

作ったのは、約800ファイルを質問文で検索できる仕組み(RAG)、答えだけでなくどの資料のどこを見たかを示す表示、見つからなければ「分からない」と返す作り、部署や役職で見える資料を分ける権限です。よく聞かれる資料から取り込み、答えの精度を確かめながら対象を広げました。いまは社員50名が使い、質問は月300回ほど。費用は月額2万〜6万円(税別)・初期費用0円です。

限界も書いておきます。元の資料が間違っていれば答えも間違います。画像だけのPDFや図で説明している資料は読み取りの精度が落ちます。資料が更新されたときの取り込み方を決めておかないと、古い内容を答え続けます。詳しくは社内AIナレッジ検索の事例に書いています。

RAG × ローカルLLMで「外に出ない社内AI」

RAGのAI部分をローカルLLMにすると、資料も、質問も、回答も、社外に出ない社内AIになります。ChatGPTへの入力を心配している会社が求めている形はこれです。小規模なら月数千円のサーバーで動き、GPU搭載機を置く場合は機器費がかかります。

当社がどう安全に作っているかは、安全にAIを入れる当社のやり方にまとめています。

よくある質問

Q. RAGとは何ですか?

AIが答える前に社内文書を検索し、見つけた箇所を根拠に回答する仕組みです。AIに覚え込ませるのではなく、答えるたびに資料を見に行かせるので、資料を差し替えれば次の質問から新しい内容で答え、どの資料を見たかも示せます。

Q. ファインチューニングとどちらを選べばいいですか?

社内の知識を答えさせたいならRAGです。ファインチューニングはモデルの追加学習で、知識の更新のたびに再学習が要り、根拠も示しにくいため、知識を足す目的には向きません。自社の文体や専門用語の癖を覚えさせたいときに検討します。

Q. 精度はどのくらい出ますか?

元の資料の整理で決まります。古い版が混ざっていれば矛盾した答えになり、画像だけのPDFは読み取れません。当社の事例では、よく聞かれる資料から取り込み、答えを確かめながら対象を広げる進め方で、社員50名が月300回使う運用になっています。

Q. 費用はいくらかかりますか?

既製のSaaSなら月数万円〜、内製なら人件費とAPIの従量料金、当社の専用構築なら初期費用0円・月額1万円〜(税別、サーバー費別)です。資料約800件・社員50名の事例で月額2万〜6万円です。

Q. 機密文書を読ませても漏れませんか?

AI部分をローカルLLMにすれば、資料も質問も回答も社外に出ません。クラウドのAIを使う場合も、学習に使われない契約(API等)を選び、資料の置き場所と権限を決めてから始めます。

まとめ

  • RAGは「資料を検索して、根拠つきで答えるAI」。覚え込ませるのではなく、見に行かせる
  • ファインチューニングは「覚えさせる」、ローカルLLMは「どこで動かすか」。目的が違う
  • 精度は資料の整理で決まる。よく聞かれる資料から始めて広げる
  • 費用は既製SaaSで月数万円〜、当社の専用構築で初期0円・月額1万円〜(サーバー費別)
  • 外に出せない資料があるなら、RAG × ローカルLLM

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この記事を書いた人

佐藤 駿介

佐藤 駿介

Shunsuke Sato

代表 / Founder & Developer, 合同会社SAi

中小企業のAI・業務自動化を専門とする開発者。営業マンや下請けを介さず、ヒアリングから開発・運用まで一貫して直接対応。「月額1万円から始められる、本当に必要なAIだけ」をモットーに、フルスクラッチ開発を中小企業の手の届く価格で提供している。

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