AI検索には勝てる質問と勝てない質問がある|10問実測
こんにちは、合同会社SAi代表の佐藤です。
先日、当社のサービスページにChatGPT経由で着地した方が、6分後にそのまま申し込みを完了するという出来事がありました。深夜2時です。営業時間外で、人は誰も対応していません。
AI検索経由で人が来る、という話は増えました。ただ「どんな質問なら自社が出てくるのか」を数字で示した記事は、ほとんど見かけません。
そこで、ChatGPTの検索機能に固定した10問を3回ずつ投げ、当社が引用されるかどうかを機械的に判定しました。結果、質問の型によって勝敗がはっきり分かれることが分かりました。実測値をそのまま公開します。
この記事はChatGPTはGooglebotの7倍サイトを読む|自社ログ実測の続編です。前回が「AIがサイトをどう読んでいるか」、今回が「どの質問なら引用されるか」にあたります。
結論:4つ分かりました
- 法律・社内ルール・ツールの使い方を聞かれると、AIは省庁や公式サイトしか引用しない。解説記事が割り込む余地はほぼない
- 「どこに頼めばいい」「相場はいくら」では、同業の中小企業サイトが引用されている。ここは勝てる
- 価格を公開している会社しか引用されない。AI開発会社14社を調べたところ、料金を公開していたのは5社だけで、引用されたのはその5社ばかりだった
- 1回だけ聞いて判断すると間違える。同じ質問でも回によって答えが変わる
計測方法(再現できるように書きます)
- ChatGPT等に直接ログインして聞くのではなく、OpenAI の Responses API に web_search ツールを付けて質問を投げました。ChatGPTが検索するときと同じ仕組みです
- 質問は固定の10問。毎回まったく同じ文言を使います
- 1問につき3回投げて、引用の分布を見ます
- 回答本文と引用URLに自社ドメインが出るかを機械判定し、結果をログに追記します
- 実施日:2026年8月20日〜22日
判定は次の4段階にしました。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| ◎ | 過半数の回で自社ページが引用された |
| △ | 引用されたが、回によって出たり出なかったりする |
| ○ | 社名は出たが、リンクは引用されなかった |
| × | まったく出ない |
ここで大事なのは「同じ条件で毎月測る」ことです。1回の結果を順位のように扱うと、次に測ったとき何が変わったのか分からなくなります。
発見1:情報系の質問では、AIは一次ソースしか引かない
10問のうち6問は、次のような「調べもの」の質問でした。
- 生成AIの社内利用ルールはどう作ればいい?
- AI法で中小企業に義務は生じますか?
- 請求書発行を自動化したい。どんな方法がある?
- RPAとAIエージェントはどちらを選ぶべき?
- AIエージェントを自分で作る方法を教えて
- kintoneが高くなってきた。自社で作り直すのとどちらが安い?
この6問で引用されたドメインを並べると、性格がはっきりします。
| 質問 | 引用されたドメイン |
|---|---|
| 社内利用ルール | nist.gov / meti.go.jp / ipa.go.jp / ppc.go.jp |
| AI法の義務 | laws.e-gov.go.jp / cao.go.jp / meti.go.jp |
| 請求書の自動化 | nta.go.jp(国税庁) |
| RPAとAIエージェント | learn.microsoft.com / openai.github.io |
| エージェントの作り方 | openai.github.io |
| kintoneの費用 | kintone.cybozu.co.jp(製品公式) |
省庁、公的機関、製品の公式ドキュメント。それだけです。
考えてみれば当然で、法律や制度について答えるとき、AIが解説ブログを根拠にする理由がありません。原典があるならそちらを引きます。ツールの使い方も同じで、提供元の公式ドキュメントより信頼できる情報源は存在しません。
つまりこの領域は、記事をどれだけ書いても構造的に勝てません。
これは重要な発見でした。多くの企業ブログが力を入れているのは、まさにこの「解説記事」だからです。SEOでは上位が取れても、AI検索では引用されないということが起こります。
発見2:発注系の質問では、中小企業が引用されている
一方で、残りの質問はまったく違う結果になりました。
「中小企業向けに安くAI開発を頼める会社を教えて」と聞いたとき、引用されたのは中小規模の開発会社5社でした。社員数十名規模、あるいは個人に近い体制の会社ばかりです。
大手は1社も出てきませんでした。
「AI開発を外注したときの費用相場を教えて」では、引用されたのは3本の記事で、いずれも「開発内容 × 費用レンジ × 期間」の表を持つ記事でした。表の形式まで揃っていたのは偶然ではないはずです。
そして「初期費用0円で業務システムを作ってくれる開発会社はある?」では、当社のトップページが引用されました。3回中2回です。
ここが勝てる土俵です。相手は大企業ではなく、同じ規模の会社です。
発見3:価格を公開している会社しか引用されない
なぜあの5社が引用されたのか。共通点を探すために、AI開発を手がける14社の公式サイトを1社ずつ開いて、料金の記載があるかを確認しました。
結果はこうです。
| 社数 | |
|---|---|
| 金額を公開していた | 5社(約36%) |
| 価格の記載がなかった | 9社 |
公開していた5社が、実際に出していた金額です。
| 公開されていた価格 | |
|---|---|
| A社 | AI開発30万円〜/RAG・チャットボット50万円〜/業務システム50万円〜(期間の目安も明記) |
| B社 | 月4万円/月10万円/月30万円/単発120万円〜 |
| C社 | PoC・プロトタイプ開発0円 |
| D社 | 構築費100万円〜+機材費(約15万円〜70万円前後) |
| E社 | 最短2週間・10万円台〜 |
※2026年8月20日時点で各社の公式サイトに記載されていた内容です。
一方、料金の記載がなかった9社には、誰もが知る大手のAI企業が並んでいます。いずれも問い合わせ・個別見積もりが前提です。
そしてその9社は、1社も引用されませんでした。
規模も知名度も実績も、当社とは比べものにならない会社ばかりです。それでも「中小企業向けに安くAI開発を頼める会社」という質問の回答には出てきません。
負けたのではなく、そもそも土俵に上がっていないのです。
AIは回答の中で、会社名と費用目安を並べた比較表を自分で組み立てていました。その表に行として載るには、金額という材料が要ります。材料を出していない会社は、AIから見れば「比較できない存在」になります。
なお、大手が価格を公開しないこと自体は不親切ではありません。大規模・個別要件の開発では見積もりが案件ごとに大きく変わるため、エンタープライズ向けでは標準的な形です。ただ「安く頼める会社は?」という質問の文脈では、それが不利に働きます。
発見4:1回だけ聞いて判断すると間違える
これは方法論の話ですが、実務では一番影響が大きいかもしれません。
最初、当社は10問を1回ずつ投げて記録していました。そのときの結果は「引用されたのは2問だけ」でした。
その後、同じ質問を3回ずつ投げる方式に変えたところ、こうなりました。
中小企業向けに安くAI開発を頼める会社 引用 2/3回 [◎×◎]
合同会社SAiはどんな会社? 引用 3/3回 [◎◎◎]
1回目の計測では「×(不在)」と記録していた質問が、実際には3回中2回引用されていました。たまたま外れた回を引いていたわけです。
生成AIは、同じ質問に同じ答えを返しません。1回の結果を順位のように扱うと、施策の効果を測るどころか、現状すら間違えます。
「先月は×だったのに今月は◎になった。施策が効いた」と判断したとして、それが本当に改善なのか、単なるゆらぎなのか。複数回測らないと区別できません。
そして、実際に契約が発生しました
2026年8月21日の深夜2時、当社のサービスページに1人の訪問がありました。サーバーログから、行動をそのまま再現できます。
| 時刻 | 行動 |
|---|---|
| 02:01 | ChatGPT経由でサービスページに直接着地 |
| 02:01〜02:04 | ページを読む(約2分35秒) |
| 02:04 | 申し込みページへ |
| 02:07 | 申し込み送信 |
着地から6分です。トップページもブログも、ナビゲーションも一切通っていません。1ページで判断が完結しています。
そしてもうひとつ。当時、このページのことはllms.txt に1文字も書いていませんでした。「AI向けの案内ファイルを置かないと拾われない」と説明されることがありますが、少なくともこの件では、AIはページ本体を見つけて推薦しています。
llms.txt が無意味という話ではありません。ただ優先順位としては、llms.txt を整えるより、ページ自体に判断材料を書くほうが先です。
中小企業がやるべきこと(実測に基づく優先順)
1. 価格を数字で書く
最優先です。レンジでも構いません。「お問い合わせください」だけのページは、AIから見て比較できない存在になります。含まれるもの・別途かかるものまで分けて書ければ、さらに引用されやすくなります。
2. 1ページで問いに答え切る構成にする
AIはサイト単位ではなくページ単位で拾います。深夜2時の申し込みも、着地したページだけで判断が完結していました。「詳しくは他のページで」という作りは、AI検索では不利です。
3. 情報解説記事の量産をやめる
法律・制度・ツールの使い方の解説は、書いても引用されません。書くなら「どこに頼めばいいか」「いくらかかるか」「何が違うか」という、発注を検討している人の質問に答える記事です。
4. 自分で数えた数字を持つ
一般論はAIが自分で書けます。書けないのは、実際にやった人の数字です。件数、年数、かかった時間、導入前と導入後の実測値。出典と調査日を書けば、それだけで一次情報になります。
5. AI用クローラーの設定を確認する
これは5分で終わって、事故が一番多い箇所です。「AIに学習されたくない」と考えて robots.txt を書いた結果、引用のためのクローラーまで一緒に遮断してしまっているケースがあります。
| 用途 | ユーザーエージェント |
|---|---|
| 学習用(遮断してもAI検索の引用には影響しない) | GPTBot / ClaudeBot / Google-Extended / CCBot |
| 引用用(遮断するとAI検索に出なくなる) | OAI-SearchBot / ChatGPT-User / Claude-SearchBot / Claude-User / PerplexityBot |
学習を断ることと、AI検索に引用されることは両立できます。まとめて遮断していないか、一度 robots.txt を開いて確認してください。
6. 同じ質問を、毎月同じ条件で測る
順位ツールのようなものはまだありません。だからこそ、自分で固定の質問を決めて、複数回投げて記録するだけで十分な指標になります。大事なのは、毎回同じ文言・同じ回数で測ることです。
この計測の限界
正直に書いておきます。
- APIのweb_searchを使ったプロキシ指標です。消費者が実際に使うChatGPTの画面と完全に一致するとは限りません
- まだ1回しか測っていません。この記事の数字は2026年8月のスナップショットです
- 契約に至った事例は1件です。再現性はこれから検証します
次回は9月に、まったく同じ10問・同じ3回で測り直します。数字が動いても動かなくても、そのまま公開します。
よくある質問
Q. AI検索対策とSEO対策は違うものですか?
土台は共通していますが、効く場所が違います。AI検索は既存の検索インデックスを情報源にしているため、そもそも検索で見つからないサイトはAIにも拾われません。その意味でSEOは前提です。一方で、AIは「回答の材料になるか」で引用先を選ぶため、価格や条件が数字で書かれているか、1ページで問いに答え切っているかが、順位とは別に効きます。
Q. どんな質問なら自社が引用されますか?
実測では「どこに頼めばいい」「相場はいくら」「AとBはどちらがいい」といった発注を検討している人の質問では、中小企業のサイトが引用されていました。逆に法律・制度・ツールの使い方といった調べものの質問では、省庁や製品公式サイトしか引用されず、企業ブログが入る余地はほぼありませんでした。
Q. 価格を公開すると値下げ競争になりませんか?
金額だけを出せばそうなります。実測で引用されていた会社を見ると、金額と一緒に「何が含まれるか」「どのくらいの期間か」「どんな場合に向いているか」まで書いています。条件を揃えずに数字だけを比べても意味がない、と伝える書き方であれば、単純な安値競争にはなりません。当社も「業界最安ではない」と明記したうえで、契約期間や修正回数の条件を並べています。
Q. llms.txt は設置したほうがいいですか?
置くこと自体は簡単なので、置いて損はありません。ただし優先順位は高くありません。当社の実測では、llms.txt に記載のないページがChatGPTに推薦されて申し込みにつながりました。また前回のログ調査でも、llms.txt へのアクセスは2週間で1回だけでした。llms.txt を整えるより先に、ページ本体に判断材料を書くほうが効きます。詳しくはllms.txtとは?書き方と設置方法で解説しています。
Q. 自社が引用されているか、どうやって調べればいいですか?
社名で聞かないでください。社名で聞けば当然出てきます。それは推薦ではなく検索です。見込み客が実際に打ち込む言葉——「(業種)を頼める会社を教えて」「(課題)はどこに相談すればいい」——で聞いてください。そして同じ質問を3回投げてください。1回だけでは、たまたまの結果と本当の傾向を区別できません。
Q. 大手が引用されないのは本当ですか?
質問によります。今回実測したのは「中小企業向けに安くAI開発を頼める会社」という文脈で、この条件では価格を公開していない大手企業は引用されませんでした。「AI開発の大手企業は?」と聞けば、当然それらの会社が出てきます。重要なのは、規模の大小ではなく質問の文脈に対して回答の材料を持っているかです。
まとめ
AI検索対策というと「何をすれば上位に出るか」という話になりがちですが、実測して分かったのはその前に「そもそも勝てる質問かどうか」を見極める必要があるということでした。
情報解説の領域では、相手は省庁や公式ドキュメントです。ここに記事を積んでも引用されません。勝てるのは、発注を検討している人の質問です。そしてその土俵では、大手ではなく同じ規模の会社が並んでいます。
必要なのは、価格を数字で書くこと。1ページで答え切ること。自分で数えた数字を持つこと。どれも今日から始められます。
そして測ってください。同じ質問を、同じ回数、毎月。数字が動いたかどうかだけが事実です。
当社はこの計測を毎月続け、結果を公開していきます。効いても効かなくても書きます。