需要予測AIの記事はたくさんありますが、たいてい「予測の精度が上がります」で終わっています。
実際に作って運用していると、精度より先に決めるべきことがあると分かります。それは「その数字で何を決めるのか」です。
ここが決まっていない状態で導入すると、よく当たる予測が画面に出るのに、誰も見なくなります。
出口は、業種で違います
同じ「需要予測」でも、使い道がまったく違います。
卸・EC:発注量を決める
いちばん分かりやすい使い方です。売れる数を予測して、在庫と発注残を引き、仕入先の発注間隔を見て、今日いくつ頼むかを出します。
効果も測りやすく、在庫金額と欠品の回数で判断できます。
飲食:仕入れを決める
来客数を予測して、食材をいくつ仕入れるかを決めます。卸との違いは、外した代償が片側に偏ることです。
在庫は翌月に持ち越せますが、生鮮は捨てることになります。だから飲食では「切らさない」より「余らせない」に寄せることが多く、同じ予測でも設定が変わります。
天気の影響も大きく出ます。雨の日に何割落ちるかは店によって違うので、その店の実績から出すことになります。
美容室・店舗:シフトを決める
ここが見落とされがちです。来客を予測して、その日に何人入れるかを決めるという使い方です。
飲食が食材を捨てるのに対し、美容室で余るのは人件費です。暇な日に3人出ていれば、その分がそのまま損になります。逆に読み違えて1人にすると、予約を断ることになります。
美容室は予約が入るので、飲食よりは読みやすい領域です。ただし当日の飛び込みや、季節(成人式・卒業式・年末)の山が効きます。
製造:生産計画を決める
いつ何をどれだけ作るか。原材料の調達リードタイムが長いほど、早く読む必要が出ます。資材によってリードタイムが大きく違う場合(段ボールは10日、化粧箱は2か月など)、予測よりも逆算のほうが効きます。
実際に作って、どうだったか
当社が開発した発注エンジンで、過去データを使った検証(バックテスト)を81通り行いました。
結果は、充足率をほぼ保ったまま、平均在庫を42%下げられるというものでした。
ただし、ここに落とし穴があります。
★ 精度の測り方を間違えると、良い仕組みが悪く見えます
最初、「予測の誤差率」で測りました。すると作ったエンジンのほうが誤差が大きく出ました(32.8% → 36.3%)。
原因は指標の選び方でした。発注は当てにいく仕組みではなく、切らさない仕組みです。欠品を避けるために多めに見積もるので、誤差で測ると必ず不利になります。
指標を「足りなかった割合」に変えたら、きれいに逆転しました。
| 方法 | 足りなかった割合 | 持ちすぎ |
|---|---|---|
| 全期間の平均だけ | 43.5% | +36.8% |
| 直近30日だけ | 68.7% | +36.8% |
| このエンジン | 30.4% | +43.9% |
切らす割合を下げるぶん、在庫は増えます。このトレードオフを隠さずに出すほうが、結果として信用されます。
導入を検討するときは、「何で測るか」を先に決めてください。目的が欠品を減らすことなら、誤差率で評価してはいけません。
必要なデータ
| 最低限 | 1年分。季節の山が1周しないと、何が季節要因かを分離できない |
| 理想 | 3〜4年分。同じ月を複数回比較できる |
| 中身 | 日付・商品・数量。単価や取引先があればなお良い |
| 形式 | CSVやExcelで構わない。会計ソフトやPOSからの書き出しで足りることが多い |
きれいに整っている必要はありません。欠けている日があっても、形がばらばらでも、こちらで整えます。
逆に、1年に満たない場合は予測を出すより「切らさない下限」から始めるほうが現実的です。データが貯まるほど精度が上がる仕組みなので、早く始めるほど有利になります。
外部の要因を入れるかどうか
気温、天気、暦、連休、通販モールの催事。これらを取り込むと、予測が実態に近づくことがあります。
ただし、最初から全部を入れないほうがいいです。何が効いているか分からないまま変数が増えると、外れたときに原因を追えなくなります。
まず販売実績だけで動かし、外れた日を見て、その日に何があったかを確かめる。そこで効いていると分かったものだけを足す。この順番が確実です。
よくある質問
Q. AI需要予測とは何ですか?
過去の販売実績などから、これから売れる数を推定する仕組みのことです。統計的な時系列予測を使うものが中心で、ニュースを読んで判断するような生成AIとは別の技術です。大事なのは予測そのものより、その数字で何を決めるかです。発注量、仕入れ、シフト、生産計画——出口が決まっていないと、当たっても使われません。
Q. 需要予測AIの費用はいくらですか?
市販の需要予測システムは、月額数万円から数十万円まで幅があります。当社が受託で作る場合は、初期費用0円・月額5万円(税別)からが目安です。扱う商品数と、連携するシステムの数で変わります。AI APIとサーバーの利用料は別途です。期間は、既存データで予測を出せるところまでで約1か月を見ています。
Q. 無料のAI需要予測システムはありますか?
表計算ソフトの関数(FORECASTなど)や、Pythonのライブラリを使えば、費用をかけずに予測そのものは出せます。商品数が少なく、担当者に手を動かせる人がいるなら、まずそれで十分です。費用をかける価値が出るのは、商品数が多くて手で回らなくなったときと、予測から発注・シフトまでを自動でつなげたいときです。
Q. どのくらいの精度が出ますか?
商品や業種によって大きく変わるので、数字でお約束はできません。それより、何で測るかを先に決めてください。上に書いたとおり、目的が欠品を減らすことなのに誤差率で評価すると、良い仕組みが悪く見えます。実物のデータを数か月ぶんお預かりできれば、バックテストで「この方法だとこうなる」をお見せできます。
Q. 飲食店でも使えますか?
使えますが、出口が卸とは違います。卸は在庫を持ちすぎないこと、飲食は食材を捨てないことが目的になるので、同じ予測でも設定が変わります。天気の影響も大きいので、その店の実績から「雨の日は何割落ちるか」を出すところから始めます。来客の記録が残っていることが前提です。レジや予約システムから書き出せるかを先に確認してください。
Q. 美容室のシフトにも使えますか?
使えます。来客を予測して、その日に何人入れるかを決める形です。美容室は予約が入るぶん飲食より読みやすい領域ですが、当日の飛び込みと、成人式・卒業式・年末といった季節の山が効きます。予約システムから過去の来店データを書き出せるかが入口になります。シフトの自動作成だけなら、シフト自動作成のツールもあります。
Q. 当たらなかったら、どうなりますか?
当たらない日は必ず出ます。大事なのは、外れたときに原因を追えることです。実績と照らして「この日は何があったか」を確かめ、効いている要因を足していく形にしておけば、使うほど実態に近づきます。逆に、中身が見えない仕組みは外れた理由が分からないので、直せません。
まとめ
- 需要予測で先に決めるのは精度ではなく、その数字で何を決めるか
- 出口は業種で違う。卸・ECは発注量、飲食は仕入れ、美容室はシフト、製造は生産計画
- バックテスト81通りで、充足率ほぼそのままで平均在庫を42%削減
- 精度の測り方に注意。欠品を減らしたいのに誤差率で測ると、良い仕組みが悪く見える
- データは最低1年、理想は3〜4年。きれいに整っていなくていい
- 外部要因は最初から全部入れない。外れた日を見て、効いているものだけ足す
- 初期費用0円・月額5万円(税別)から
実際のデータを数か月ぶんお預かりできれば、バックテストで結果をお見せできます。そこまでは無料です。お問い合わせからご連絡ください。