先日の打ち合わせで、「メールの仕組みを他社に提供するなら、何か届出は要りますか」と聞かれました。調べると、総務省への電気通信事業の届出が必要でした。次に作るチャットも同じ対象です。
開発の現場でも知られていないことが多いので、要る・要らないの分かれ目を整理します。判断の根拠は、総務省の電気通信事業参入マニュアル[追補版](令和5年1月改定)です。
分かれ目は「他人どうしの通信を仲介するか」
届出が要るかどうかは、サービスの名前ではなく利用者どうしのメッセージを、内容を変えずに相手へ届けているかで決まります。マニュアルの事例を、よくある形に絞って並べます。
| サービスの形 | 届出 |
|---|---|
| 自社サイトの問い合わせフォーム・チャットボット | 不要(電気通信事業に当たらない) |
| 自社の顧客に送るメールマガジン | 不要(電気通信事業に当たらない) |
| 業務用のSaaS(利用者と自社の間の通信だけ) | 不要(届出の要らない電気通信事業) |
| SaaSの一部に、利用者間のメール・チャット機能がある | 必要 |
| 利用者どうしのメッセージアプリ、閉じたチャットルーム、オンライン会議 | 必要 |
| 企業から受け取った文面を、そのまま購読者へ送るメール・SMS配信 | 必要 |
| 企業の情報をもとに、こちらで文面を作って送るメール配信 | 不要(届出の要らない電気通信事業) |
見落としやすいのは、本業はSaaSでも、機能の一部にチャットがあれば対象になる点です。予約システムに店とお客様のメッセージ欄を付ける、業務アプリに社外の取引先とのチャットを付ける、といった場合です。
サーバーが海外にあっても、国内の利用者向けに提供するなら同じ扱いです。
出す時期と書類
届出は事業を始める前に、本社の所在地を管轄する総合通信局へ出します。総務省の届出ページに様式と記載例があり、e-Govの電子申請にも対応しています。法人の場合の主な書類は次のとおりです。
- 電気通信事業届出書
- ネットワーク構成図
- 提供する電気通信役務に関する書類
- 登記事項証明書
提供するサービスの中身(業務の内容)を変えるときは、変更する前に届け出ます。メールを売り出したあとにチャットを足す予定があるなら、最初の届出でまとめて出しておくと、手続きが1回で済みます。打ち合わせでも、この形をおすすめしました。
自前で大規模な回線設備を持つ場合は、届出ではなく登録になります。クラウドのサーバーを使う一般的なSaaSであれば、届出の範囲で考えるのが通常です。
届け出たあとに意識すること
電気通信事業者になると、通信の秘密の保護がはっきりと求められます。運用担当者が利用者どうしのメッセージを目的なく読む、ログを分析に流用する、といったことができない前提で、閲覧の権限と記録を設計しておきます。
サポートのために中身を見る必要がある場合は、利用規約で同意を取る、閲覧した記録を残すなど、扱いを先に決めてください。
迷ったときは
マニュアルにない形のサービスもあります。判断がつかないときは、提出先の総合通信局に、サービスの流れを図にして相談するのが確実です。この記事は判断の目安で、個別の結論は総合通信局の判断によります。
SAiでは、メール・チャット・LINE連携を含むサービスの開発を、初期費用0円・月額1万円(税別)からお受けしています。届出が必要になりそうな機能は、設計の段階でお伝えします。開発料金と対応範囲