「この画面でいつも同じことをしている」という作業は、どの会社にもあります。取引先のシステムに同じ値を打ち込む。表示されている内容を社内の形式に書き写す。毎回同じ条件で絞り込む。
ブラウザ拡張は、その画面の上で直接助ける道具です。
ただし、何でもできるわけではありません。この記事ではできること・できないことと、RPAや既存システムの改修とどちらを選ぶかを整理します。
ブラウザ拡張でできること
具体的には、こういうことができます。
| 例 | |
|---|---|
| 画面に機能を足す | 取引先の受発注画面に「社内コードを表示」のボタンを足す |
| その場で書き換える | 単位や通貨をその場で換算して表示する |
| 入力を助ける | よく使う値を候補で出す。打ち間違いをその場で知らせる |
| 転記をなくす | 表示されている内容を、社内のシステムへ1クリックで送る |
| 見落としを防ぐ | 条件に合う行を色づける。危ない値に警告を出す |
| まとめて取り出す | 一覧をCSVにして落とす |
共通しているのは「人が画面を見ている、その場で助ける」ことです。
できないこと
先にお伝えしておきます。ここを曖昧にしたまま作ると、途中で止まります。
- 人が開いていないと動きません。夜中に自動で、という使い方には向きません
- 相手のサイトの作りが変わると止まります。画面の構造を手がかりにしているので、改修があれば直す必要があります
- 画像認証やワンタイムパスワードは越えられません。人が入力する前提になります
- ブラウザごとに作り分けが要ります。ChromeとEdgeはほぼ同じですが、Safariは別です
- 相手方の利用規約で禁じられている場合があります。先に確認が必要です
RPA・システム改修とどう選ぶか
| ブラウザ拡張 | RPA(サーバー実行) | 既存システムの改修 | |
|---|---|---|---|
| 動くとき | 人が画面を開いている間 | 決まった時刻・自動 | 常時 |
| 向く作業 | 入力の補助、転記、確認 | 定期的な取得・大量処理 | 業務の流れそのもの |
| 相手のシステム | 触らない | 触らない | 改修が要る |
| 相手の許可 | 利用規約の確認 | 利用規約の確認 | ベンダーとの調整 |
| 壊れやすさ | 画面が変わると止まる | 画面が変わると止まる | 安定している |
| 費用の目安 | 月3万〜8万円 | 月1万〜4万円 | 数十万〜数百万円 |
相手のシステムに手を入れられないときに、拡張とRPAが候補になります。そのうえで、
人が見ている最中に助けたい → ブラウザ拡張
人がいなくても進めたい → RPA
両方 → 組み合わせることもあります
APIが用意されているなら、そちらを使うほうが確実で安く済みます。画面に依存しないので、相手の改修で止まりません。まずAPIの有無を確認してください。
当社では、APIの無い取引先システムから毎朝自動でデータを取る仕組みを実運用しています。詳しくはAPIの無いシステムを、ブラウザ操作で自動化した事例をご覧ください。
配布のしかたは3通りです
ここを知らないまま進めると、「作ったのに配れない」ことになります。
① Chromeウェブストアで公開する
誰でも入れられる形です。開発者の登録に5ドル(一度きり)がかかります。年会費や拡張ごとの料金はありません。
公開には審査があります。権限を多く要求するもの、取得するデータの説明が足りないものは差し戻されます。社外に配る場合はこの形です。
② 限定公開(URLを知っている人だけ)
ストアには載せるが、検索には出ない形です。URLを知っている人だけが入れられます。審査は必要です。
③ 社内配布(いちばん多い形)
Google Workspace を使っている会社なら、管理画面から自社の端末にだけ配れます。強制インストールもできるので、社員に「入れてください」と頼む必要がありません。
社外に出さないなら、この形がいちばん楽です。審査を待つ必要がなく、直したらすぐ反映できます。
始める前に決めること
4つです。ここが決まっていれば、見積もりが出せます。
1 対象のブラウザ Chromeだけでよいか、Edgeも要るか
2 対象のサイト どの画面で動かすか(1つか、複数か)
3 データの置き場所 端末の中だけか、社内サーバーへ送るか
4 誰が配るか 社内配布か、ストア公開か
3がいちばん大事です。扱う内容によっては、端末の外に出さない設計にします。お客様の情報を含む場合は、どこに保存して誰が見られるかを先に決めます。
費用と期間の目安
当社の場合です。
| 費用 | 月額3万〜8万円(税別)・初期費用0円 |
| 変わる要因 | 対象サイトの数、動かす画面の複雑さ、社内システムとの連携の有無 |
| 期間 | 1つの画面で動くところまで、約2〜3週間 |
| 課金開始 | 実際に使い始めた月から |
まず1つの画面で動くものを作って、使ってもらう進め方をおすすめしています。使ってみると「ここも足したい」が必ず出てくるので、最初から全部を設計しないほうが早く着地します。
注意しておきたいこと
相手のサイトが変われば、直す作業が発生します。これは避けられません。月額に含めるか、都度の対応にするかを先に決めておいてください。当社は月額に含めています。
権限は最小限にします。拡張は「すべてのサイトのデータを読み取る」権限も取れますが、必要な画面だけに絞ります。インストールするときに出る警告の文言が変わるので、社員に説明しやすくなります。
相手方の規約を先に見ます。自動操作や画面の改変を禁じているサービスがあります。禁じられている場合は、別の方法を考えます。
よくある質問
Q. ブラウザ拡張の開発費用はいくらですか?
当社では月額3万〜8万円(税別)・初期費用0円が目安です。対象サイトの数と、社内システムとつなぐかどうかで変わります。1つの画面で動くところまでなら2〜3週間です。作り切りで請け負う会社では、数十万円からの見積もりになることが多いようです。
Q. RPAとどちらを選べばいいですか?
その作業が「人が画面を見ている最中」に起きるかどうかで決まります。入力の補助や確認のように、人の作業に寄り添うものは拡張。毎朝決まった時刻にデータを取る、といった人の手を離れるものはRPAです。どちらも相手のシステムには手を入れません。
Q. 社内だけで使いたいのですが、ストアに公開しないといけませんか?
いいえ。Google Workspace をお使いなら、管理画面から自社の端末にだけ配れます。審査もありません。社外に配らないのであれば、この形がいちばん簡単です。
Q. 取引先のシステムで使っても大丈夫ですか?
相手方の利用規約によります。自動操作や画面の改変を禁じているサービスがあるため、先に確認します。禁じられている場合はお受けできません。表示を見やすくするだけの用途でも、規約の確認は行います。
Q. Edgeでも動きますか?
Chromeで作ったものは、Edgeでもほぼそのまま動きます(同じ土台のため)。Safariは仕組みが違うので、別に作ることになります。対象のブラウザは最初に決めてください。
Q. 作ったあと、動かなくなることはありますか?
あります。相手のサイトの画面が変わると止まります。これは拡張の性質なので避けられません。止まったら直す前提の仕組みとお考えください。当社は月額に修正を含めています。止まったことに気づける仕組み(エラーの記録)も一緒に作ります。
Q. 実績はありますか?
ブラウザ拡張として納品した案件は、公開できるものがまだありません。近い実績として、APIの無い取引先システムをブラウザ操作で自動化し、毎朝7時に動かしているものがあります(事例)。扱う技術は隣接していますが、別物なので正直にお伝えしています。ご相談の内容をうかがって、拡張が向くのか、RPAや別の方法が向くのかからお答えします。
まとめ
- ブラウザ拡張は「人が画面を見ている、その場で助ける」道具
- 人がいなくても動いてほしいならRPA、画面に出す必要がないならAPI連携のほうが向く
- 相手のシステムに手を入れられないときの選択肢。APIがあるならそちらが確実
- 配布は3通り。社外に出さないなら社内配布がいちばん楽(審査なし)
- 始める前に決めるのは対象ブラウザ・対象サイト・データの置き場所・誰が配るかの4つ
- 費用は月額3万〜8万円(税別)・初期費用0円、1画面で約2〜3週間
- 相手のサイトが変わると止まる。直す前提の仕組みと考える
どの方法が向いているかは、作業の中身を聞けばお答えできます。拡張が向かない場合は、そうお伝えします。お問い合わせからご相談ください。