こんにちは、合同会社SAiの佐藤です。中小企業向けに業務システムを作っています。
「見積もりをもらったけれど、この金額が高いのか安いのか分からない」
これが、システム開発でいちばん多いご相談です。無理もないと思います。車や家と違って、同じものが他所で売っていない。比べようがないからです。
この記事では、公開されている相場を整理したうえで、当社が実際にお出しした見積書の内訳をそのまま公開します。金額の当てっこではなく、見積書のどこを見れば判断できるかが分かるように書きます。
結論:費用は「工数 × 単価」でしか決まらない
先に結論です。
- システム開発の費用は、ほぼ「工数(人日・人月)× 単価」で決まります。費用の約8割は人件費です
- 相場に幅があるのは、単価が会社の構造で変わるからです。技術の差より、中間マージン・営業組織・オフィスの差が効きます
- だから総額だけ見ても判断できません。「何人日で、1人日いくらか」が書かれていない見積書は、比べようがない
- 安くする方法は範囲を切ることです。単価を値切るより効きます
順に見ていきます。
相場:公開されている数字
人月単価
人月単価は、エンジニア1人が1か月稼働したときの金額です。職種と経験で変わります。
| 職種 | 人月単価 |
|---|---|
| PM/PL | 70万〜200万円程度 |
| SE(初級) | 80万〜100万円程度 |
| SE(中級) | 100万〜120万円程度 |
| SE(上級) | 120万〜200万円程度 |
| PG(プログラマー) | 40万〜80万円程度 |
(出典:マイナビTechTus「システム開発の費用・料金相場は?」)
1か月を20営業日とすると、人月100万円は1人日あたり5万円です。見積書が人日で書かれている場合は、20倍すると人月単価になります。
種類別・作り方別の費用
同じ「業務システム」でも、既製品を使うか、パッケージをカスタマイズするか、ゼロから作るか(フルスクラッチ)で、桁が変わります。
| システムの種類 | 既存ツール | パッケージ+カスタマイズ | フルスクラッチ |
|---|---|---|---|
| 基幹システム | 月額5万円〜 | 100万円前後 | 500万円前後 |
| 業務支援システム | 月額5万円〜 | 50〜200万円 | 400万円前後 |
| Webシステム | 無料〜100万円 | 100〜300万円 | 300万円前後 |
| スマホアプリ | 100万円前後 | 100〜500万円前後 | 500万円〜 |
(出典:同上)
工程ごとの内訳
1,000万円の開発を例にすると、工程の比率はおおむねこうなります。
| 工程 | 割合 | 1,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 要件定義 | 5〜10% | 50〜100万円 |
| 設計 | 15〜20% | 150〜200万円 |
| 実装 | 40〜50% | 400〜500万円 |
| テスト | 20〜30% | 200〜300万円 |
| リリース | 5〜10% | 50〜100万円 |
実装が半分弱で、その前後(要件定義・設計・テスト)を合わせると半分を超えます。「作る」以外の部分が思ったより大きい、というのが、見積もりを見て驚かれる理由のひとつです。
実際の見積書の中身
ここからが本題です。当社が先日お出しした見積書の内訳を、そのまま出します。EC事業者さま向けに、商品登録・CSV処理・会計ソフト連携の3業務を自動化する案件です。
| 区分 | 人日 | 金額(税別) |
|---|---|---|
| 業務分析/現状業務調査(現地立会いを含む) | 7 | 210,000円 |
| 要件定義/業務フロー再設計/システム設計 | 5 | 150,000円 |
| 業務ツール(作業画面)の構築 | 8 | 240,000円 |
| AIが安全に操作するための仕組みの整備 | 6 | 180,000円 |
| 業務自動化の実装 | 7 | 210,000円 |
| API/既存システム連携 | 3 | 90,000円 |
| 導入設定/テスト/データ移行/マニュアル | 4 | 120,000円 |
| 合計 | 40人日 | 1,200,000円 |
1人日30,000円(税別)で積算しています。人月に直すと60万円です。先ほどの相場表と比べると、SE初級の下限(80万円)よりさらに低い水準になります。理由は後で書きます。
なお、この見積もりは一括でお支払いいただく形に組み直したものです。当社は月額でお受けするのが基本で、この120万円は月額でお受けした場合のおよそ2年分にあたります。なぜ一括にしたかは、最後の「当社の料金」に書きました。
工程の比率を見ると、業務分析と要件定義で12人日(全体の30%)を使っています。一般的な相場表では要件定義は5〜10%ですが、中小企業の業務自動化では、ここが薄いと後で必ず作り直しになります。
「いまどうやっているか」が資料になっていないことがほとんどだからです。担当者の頭の中にあるものを、実際に作業を見ながら書き起こす時間が要ります。
なぜ単価が会社によって3倍も違うのか
人月40万円の会社もあれば、200万円の会社もあります。この差は、エンジニアの腕の差より、会社の構造の差です。
同じ1人月の中に、次のものが入っています。
- エンジニアの人件費
- 営業担当の人件費
- 間に入る会社の取り分(元請け→下請け→孫請けと流れる場合、各社が乗せます)
- オフィスの賃料
- 広告費
作る人以外にかかる費用が、そのまま単価に乗ります。大手に頼むと高いのは、技術が高いからというより、ここの構造が違うからです。
当社が1人日30,000円で出せているのは、この裏返しです。
- 代理店を通さず、下請けにも出しません
- お問い合わせを受けた人間が、そのまま作ります。伝言ゲームがないので、要件のズレも起きません
- 大きなオフィスを持たず、広告も出していません
安さの理由は技術ではなく、間に人が入っていないことです。逆に言えば、大規模で何十人も動くプロジェクトには向きません。そういう案件は、体制を持っている会社のほうが確実です。
見積書を見るときの5つのポイント
総額だけでは判断できません。次の5つが書いてあるかを見てください。
1. 区分が分かれているか
「システム開発一式 ◯◯円」の1行見積もりは、比べようがありません。せめて要件定義・開発・テスト・導入くらいには分かれているべきです。
2. 工数と単価が書いてあるか
「何人日で、1人日いくらか」。これが書いてあれば、他社と同じ土俵で比べられます。総額が安くても、工数が半分なら、やることも半分です。
3. 含まれないものが書いてあるか
後から増える費用は、たいていここです。サーバー代、外部サービスの利用料、データ移行、マニュアル作成、教育。「書いていないもの=含まれていない」と思って読んだほうが安全です。
4. 保守費が分かれているか
開発費と保守費が混ざっていると、毎月いくらかかるのかが見えません。稼働後の費用は、必ず別に確認してください。
5. 前提条件があるか
「既存システムからCSVが出せること」「対象は3業務まで」といった前提です。これがない見積書は、範囲が決まっていないということなので、後で必ず揉めます。
費用を下げる、現実的な方法
単価を値切るより、確実に効く方法が3つあります。
範囲を切る。 いちばん効きます。「全部まとめて」ではなく、いちばん時間を取られている1〜2業務だけを先にやる。効果が出てから次を足すほうが、失敗したときの損も小さく済みます。当社の案件でも、第1期は3業務に絞っています。
既存の仕組みを使えるようにしておく。 既存システムからCSVが出せるかどうかで、工数が大きく変わります。データの出し入れ口があれば繋ぐだけですが、画面操作しかできない場合は、その部分だけ別の方法が必要になります。発注前に、社内のシステム担当か、入れた業者に確認しておくと見積もりが安定します。
助成金を使う。 賃上げとセットになりますが、厚生労働省の業務改善助成金は、システム開発も対象になります。対象経費の例に「顧客管理情報のシステム化」が明記されています。詳しくは業務改善助成金の対象経費|システム開発は使えるかに書きました。なお、当社は助成金の申請代行は行っていません。
当社の料金
最後に、当社の価格を書いておきます。
初期費用0円の月額制でお受けするのが基本です。作って納めて終わりではなく、稼働してからも直し続ける前提でお預かりします。稼働するまで料金は発生しません。軽微な修正・更新は回数を気にせず月額内で柔軟に対応し、大きな機能追加・改修のみ別途お見積もりします。
この記事に出した120万円の見積もりは、例外です。業務改善助成金は設備投資に対する助成なので、月額の利用料は対象になりません。そのため、月額でお受けした場合のおよそ2年分を、一括の形に組み直しています。
つまり同じ内容でも、
- 月額でお受けする(初期費用0円。稼働するまで課金なし)
- 一括でお受けする(助成金や予算の都合がある場合。この記事の見積もり)
どちらの形にもできます。支払いの形をお客様の事情に合わせられるのも、間に会社が入っていないからです。大手に頼むと、契約の型が先に決まっていて動かせないことが多いと思います。
これまで100社以上の中小企業さま・個人事業主さまのシステムを作ってきました。フルスクラッチなので、既製品に業務を合わせる必要はありません。
まとめ
- 費用は「工数 × 単価」。約8割が人件費です
- 人月単価はPG40〜80万円、SE中級100〜120万円あたりが目安。人月100万円=1人日5万円
- 単価の差は、技術より会社の構造の差。中間マージン・営業・オフィスが乗ります
- 見積書は区分・工数と単価・含まれないもの・保守費・前提条件の5点を見る
- 安くするなら範囲を切る。単価交渉より効きます
「この見積もりは妥当か」「この範囲だといくらになるか」といったご相談は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。範囲をうかがったうえで、先に金額をお伝えします。他社さまの見積もりを見ての second opinion でも構いません。
本記事の相場データは2026年9月時点の公開情報(マイナビTechTus「システム開発の費用・料金相場は?平均や見積もり比較、安くおさえる方法」)を参照しています。当社の見積もり例は実際にお出ししたもので、金額は税別です。